運動をしようと思っても高齢者の方は、若い世代とは違って簡単にできる方ばかりではありません。
その大きな理由としては、加齢に伴う筋力低下や体力低下があることが挙げられます。
同年代でも身体機能に個人差がある点は世代関係なく共通していますが、高齢になると当然その方の若い頃よりも筋力・体力ともに低下しているのは事実です。
そのような状態から運動の習慣がない方が突然何か運動をしようとしても、どうしたら良いのか分かりにくいでしょうし、不安もあるかと思います。
そんな時おすすめなのが手軽に行える体操です。
今回は、高齢者向けの体操の効果・注意点・おすすめ記事をご紹介します。
体操の高齢者への効果・目的
普段から簡単な体操を取り入れることで筋力・体力を維持することができます。
また、座ったままでも行うことができる項目が多いため、車いすが必要な方も含めてデイサービスなどの利用者さん全員が同じプログラムに取り組めることから、一体感も感じられます。
やり方を覚えてしまえば、ご自宅でも気軽に行えますね。
さらに、動かしたい部位ごとに効果的な体操方法があるため、鍛えたい筋肉をより重点的に…ということも実行に移しやすいメリットもあります。
そして体操とは言っても体を動かすだけが体操ではありません。
脳トレは頭の体操と言うこともできますし、頭と体を同時に動かすものはコグニサイズと呼ばれ認知症の予防にも効果が期待できます。
体操をするときの注意点
手軽に行える体操ですが、注意していただくこともあります。
それは体操の中にも骨折など、怪我の状態によっては避けるべき動作が含まれている点です。
利用者さんの状態確認を徹底することでリスクの回避に繋がりますので、決して忘れてはいけません。
また、ご自宅でも簡単にできる運動だからこそ、1人で実行に移して体を痛めてしまうことのないように利用者さんに注意を促す必要もあるでしょう。
身体を鍛え、機能の維持・向上を図るための体操が逆効果になってしまっては元も子もありません。
それぞれの身体の状態に合わせ、行う項目と避けるべき項目を明確にしながら無理なく取り組むことが効果的に体操を行うにあたって重要なポイントです。
【高齢者向け】簡単・座位でOK!!おすすめ体操
①上肢の体操
肩口から手の先にかけてを上肢と言います。
上肢は普段の生活の中で当たり前に行っている動作と密接に関係しているイメージがつかみやすい部位なのではないでしょうか?
例えば、着替えや入浴、食事などで手先や肩を活用していますよね。
杖や歩行器を利用されている方はその操作に上肢の力を活用していますし、車いすを自操される方も上肢の力を活用して移動していると言えます。
しかし、日常生活を振り返ってみると意識してストレッチをしているという方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか?
ここではちょっとした時間で上肢を動かせる簡単な体操をご紹介しています。
②下肢の体操
下肢は脚部のこと。普段の歩行、段差の昇降、立ち座りなどの動作には足の力が必要不可欠です。
高齢者の方は今までは何ともなかったようなちょっとした段差に躓いて転倒をしてしまったなんてことは珍しい話ではありません。
それは自分が思っていたよりも脚が挙がらなくなったことも原因の1つかもしれません。
杖や歩行器などの福祉用具を活用する必要のある方も、独歩に支障がない方もやはり自分の足で歩き続けたいと考えているのではないでしょうか?
下肢の力を鍛えることは脚の力の維持・向上を図り、転倒を予防することにも繋がるんです。
③簡単&楽しい運動体操ゲーム
「どうせ体を動かすのであれば楽しみながらできる方法はないだろうか」と思ったことはないでしょうか・・・?
運動言う言葉だけを聞くと、体を動かすことが苦手な方にとってはちょっとハードルが高く感じます。
体育の授業が苦手だったという方などはそう感じる方も見えるかもしれませんね。
しかし、運動をゲーム感覚で楽しむことができるとなったらどうでしょう。
ここでは楽しみながら体の力を活用したゲームをご紹介しています。
もしかしたら、普段施設の中で行っているレクリエーションも含まれているかもしれませんが、それも視点を変えれば楽しみながらできるトレーニングという気づきになるかもしれませんね。
④指体操
実は、指は「第2の脳」とも言われる程、脳と繋がる神経が多い部位なんです。
つまり指先の刺激は脳にとっても良い刺激になると言っても過言ではありません。
また、衣服のボタンを留めたり、テレビやエアコンのリモコンを押したり、箸を使ったりと日常生活の中で指の力を必要とする動作は多くあります。
しかし、指は普段の体操の中でも意識して動かす機会は少ないのではないでしょうか?
ここでは楽しみながら気軽にできる指体操をご紹介しています。
脳トレの要素を含むものもありますので、認知症の予防効果も期待できるでしょう。
⑤ボール体操
皆さんはボールと言えばサッカーや野球と言った球技を思い浮かべる方が多いと思います。
実はボールも体操に使うアイテムとして効果的なものなんです。
バランスボールのような専用のボールではなく、柔らかいものであれば普通~小さめ程度のサイズのボールを用意すればすぐに取り掛かることができます。
例えば、ボールを投げる動作をイメージしてみてください。ボールを掴む指先の力、遠くへ飛ばそうとする肩や腕の力を使っているのにお気づきでしょう。
このようにボールを使うからこそできる動作を取り入れたのがボール体操です。ぜひ挑戦してみてください。
⑥タオル体操
タオルは私たちの生活に身近なアイテムの1つですね。
どこのお宅にもあるであろうタオルも体操に取り入れることで、道具を使わずに行う体操では行えないような動作を取り入れることができるんです。
少しイメージしてみてください・・・普段の何気ない動作であるタオルを畳んだり、絞ったりする動作。これらは当然手の力を活用して行う動きですよね。
タオルを活用することで手先や腕はもちろん、足の指を使った体操もできるんです。
また、お手軽に姿勢改善に効果が期待できる体操を行うこともできます。
このようなタオルを使ったプログラムも体操のラインナップに加えてみてはいかがでしょうか?
⑦棒体操
棒体操と言う言葉は聞き慣れない方も多いかもしれません。
タオル体操やボール体操と違ってちょっとイメージがしづらいかと思います。
棒とは言っても杖のようにしっかりした棒状の物を用意する必要はありません。新聞紙を丸めて棒状にしたものでかまいません。
効果としてはバランスの維持や改善を図ることが期待でき、それは転倒の予防にも繋がります。
使用する道具である棒も簡単に用意することができるので、ご自宅でも行いやすいと思います。
継続して行っていくことで効果が期待できるので、このように簡単な体操を繰り返していくことが大切です。
⑧高齢者向けリズム体操
リズム体操はその名の通り、リズムに合わせて行う体操です。
音楽に合わせて体を動かす機会になりますので、慣れ親しんだ音楽を楽しみながら体操をするという魅力があります。
音楽を楽しみながら体操をするとそれは脳にとって良い刺激になり、認知症の予防が期待できます。
ちょっと体操は苦手だというような方でも好きな音楽と一緒であれば取り組みやすいと思います。
利用者の皆さんがよく知っている曲に合わせて行うものや、リズム体操の定番とも言えるものも含めてご紹介していますので、ぜひ試してみてください。
⑨手足を使うゲーム(手足の体操ゲーム)
ここでは座りながら楽しんで手や足を使って行うゲームをご紹介しています。
ただ運動するだけではなく楽しめた方が良いと思いますよね。
ちょっとした体操であれば1人でも行えますが、このようなゲームは他の利用者さんと一緒に取り組める施設ならではの運動とも言えます。
風船バレーのような定番のゲームも座って行える立派な運動とも言えるでしょう。
また、じゃんけんも手だけではなく足を使って行うことができますので、それを活かした脳トレを取り入れたゲームをやってみるのも楽しいです。
手の運動と足の運動、脳トレを一緒に行えて一石三鳥なのではないでしょうか?
⑩腹筋トレーニング
腹筋は学生にはお馴染みのスポーツテストの項目にも含まれていることからも、鍛えるのが重要な筋肉の1つであることが分かるかと思います。
あまり知られていないかもしれませんが、実は腹筋は良い姿勢を保つためにも必要な筋肉なんです。
背筋を伸ばすと言う言葉もある通り、背筋は姿勢の保持に欠かせない筋肉ですが、腹筋と背筋の両方が欠かせないんです。
また、代謝を上げる効果もあり便秘の改善効果も期待することができます。
腹筋と言うと寝た姿勢から行うイメージが強いですが、ここでご紹介しているものは椅子に座ったまま行えるので、ぜひ試してみてください。
⑪手遊び歌(手の体操)
手遊びは昔ながらの遊びの1つですので、特に女性の方は馴染みが深い方も多いと思います。
手遊びは音楽に合わせて行う脳トレの効果も期待できる手の体操と言えるでしょう。
手遊びと言っても複数の形があり個人で行うもの、2人が向き合って行うもの、そして大人数で行えるものがあります。
個人で行うタイプのものは比較的簡単ですが、2人以上で行う場合は息を合わせて行うので、ちょっと難しいかもしれませんがそれもまたいい刺激になるでしょう。
2人で行う手遊びだとすごく上手い方であればびっくりするような速さで息もぴったりにできるなんてこともありますが、そこまで速さと正確さは求めなくても大丈夫です。
リズムに合わせて楽しんでみましょう。
⑫上肢&下肢筋力トレーニング
高齢になっても元気で生活していきたいと思いませんか?
そのためには今ある機能を維持していくことが重要です。
そして機能の維持のためには一定以上の適度な運動が欠かせません。
運動を行うことで、普段なかなか体を動かすことがなく衰えた力もある程度の向上を図ることができるので、習慣として行うことが重要です。
ここでご紹介しているのは上肢、下肢それぞれを鍛えるのに効果が期待できるものになっています。
中にはゲーム感覚で体を動かせるトレーニングもありますので、レクリエーションに取り入れてみるのもおすすめです。
⑬口腔機能レクリエーション(口の体操)
皆さん、毎日しっかり食事をしていますか?
美味しい物、好きな物をこれからも食べていくには口腔機能の維持が欠かせません。
高齢になるとご自分の歯が少なくなっている方も多いかと思いますが、口腔機能のトレーニングの重要性に自分の歯の有無は関係ありません。
息を吸ったり、吹き込んだりといった口周りの筋肉を使った体操を行うことで、飲み込む力が鍛えられていき、恐ろしい誤嚥を防ぐための力をつけていくことが期待できるんです。
誤嚥を防ぐために食事の前に口腔体操をする施設が多数かと思いますが、そのような体操に加えてここでご紹介しているものを行ってみるのおすすめです。
⑭高齢者向けダンス
音楽に合わせて体を動かすという点はリズム体操にも似ていますが、こちらもまた少し違った雰囲気を楽しめると思います。
ダンスと言うと激しいイメージを持つ方も見えるかと思いますが、アイドルやダンサーがテレビで見せる難しいものばかりがダンスではありません。
実は座ったまま行える高齢者の方にも楽しみやすい振り付けがあるんです。
「リズム感がないから苦手」だと思う方も見えるかもしれませんが、ご安心ください。
レクリエーションとしてのダンスですので、求められるのは「正確さ」ではなく「楽しんで体を動かす」ことです。
曲も利用者の皆さんに馴染みのあるものを中心にご紹介しています。
⑮脳トレ手遊び
皆さんは巧緻性(こうちせい)という言葉をご存知でしょうか?
簡単に言ってしまえば、指先の器用さを表す言葉です。
指先は脳と繋がる神経が多いため、巧緻性を高められるような手先を使った動作は同時に脳トレにもなるということです。
そんな脳トレの効果を期待できる遊びをいくつかご紹介しています。歌を使った手遊びだけではなく、おそらく経験した方も多いであろうグーパー体操なども効果的なものと言えるでしょう。
また、身近な遊びで言えば折り紙やお手玉も伝統的な遊びであり、指先を使った刺激のある遊びと言えます。
最初はそのような身近な遊びから始めるとちょっとした時間にも取り入れやすくておすすめです。
⑯体操レクリエーション
ここでご紹介する体操のメリットとして挙げられることは、座ったまま行えることです。
デイサービスなどの施設では「全員が参加しやすいプログラムを」と考えると歩行や立位が困難な方も一緒に行えるように、座って行うことを考える必要がありますね。
椅子に座った状態であっても目的に合った体操で効果的なトレーニングを行えますし、椅子に座っているからこそできる項目も含まれており、椅子に座って行う体操が立って行う体操に劣っているわけではないと自信を持って言えます。
肩こりや腰痛といった利用者の皆さんの気になる部位に適した項目や、転倒予防を期待できる項目など様々なバリエーションがあります。
⑰頭の体操(簡単ゲーム)
「脳トレ=プリントの問題」ばかりではありません。
それらも立派な脳トレですが、簡単なゲームで楽しみながら頭の体操を行うこともできるんです。
例えば、問題を解くという形でもクイズ番組のような出題形式で問題が出てくると、普段と違った雰囲気の中で問題を楽しむことができますよね。
また、記憶力や反射神経といった脳に刺激のある要素をゲームの中に取り入れると、脳トレと言ったイメージも若干やわらぎますので、脳トレと言うと抵抗を感じる方でも気軽に参加しやすいのではないでしょうか。
⑱頭の体操(ホワイトボード)
施設であればどこにでもあると思われるホワイトボード。
その日の食事のメニューが書かれていたりと毎日活用するものではありますが、レクリエーションにも有効活用できます。
そのメリットとしては耳だけではなく目でゲームの進行を確認できることにあります。
例えば、口頭だけでは説明しづらい穴埋め形式のクイズも文字で訴えることで伝わりやすくなります。しりとりもゲームの進行の履歴が分かりやすくなります。
それだけではなく、耳が聞こえづらい方でも進行を確認しやすくなるメリットも生まれます。
ホワイトボードは脳トレの幅を広げる要素の1つと言えるでしょう。
⑲頭の体操(クイズ)
皆さんはテレビでクイズ番組を見ることはありますか?
中には高学歴の芸能人が超難問に挑むような内容から、一般常識~少し難しい程度の内容など様々ですよね。そんなクイズも頭の体操としてはぴったりなんです。
ただし、問題が簡単すぎても手ごたえがなく脳トレ要素としては弱くなってしまいます。
とは言っても難しすぎても全然分からないので面白くないと感じられてしまうでしょう。
適度な難易度であれば、達成感も得られ頭の体操としても効果的なのですが、その適度な難易度と言うのが難しいですよね。
そんな時は下記リンクのような出題形式を参考にしてみてください。
⑳頭の体操(言葉遊び&運動)
言葉遊びは手軽にできる頭の体操です。
連想したり、考えたり、それを口に出して言うことは脳にとっても良い刺激になります。
しりとりや、早口言葉といった皆さん誰もが体験したことがあるであろう遊びもこれに含まれると言えるでしょう。
そのようなちょっと懐かしい遊びを今経験すること自体も昔を懐かしく感じられ、そのこと自体も良い刺激になります。
また、脳への良い刺激を期待できる指先の体操もおすすめです。
ここでご紹介しているものの中にはちょっと珍しい足の指を使ったゲームも含まれています。
手軽に行えるのがメリットですのでちょっとした時間に取り入れてみるのもおすすめです。
以上、高齢者向け簡単おすすめ体操集でした!
さいごに
いかがでしたでしょうか?
一言で体操と言っても体の部位ごとにどこを鍛えるのかで方法が変わってきますし、同じ部位に効果が期待できる体操にも複数のパターンも存在します。
道具を用いるのか、用いないのか施設で行いやすいものを選ぶと良いでしょう。
また、脳トレも立派な頭の体操です。繰り返して行っていくことで認知症の予防につながっていきます。
折り紙のような身近にある意外なものも脳にとって良い効果がありますので、取り入れるのは難しくはありません。
手先を使うなど、体を動かすことで脳にとっても良い刺激を得られる場合がありますので、体を動かしつつ脳トレ効果を期待したい場合はそのような項目を選びましょう。
このように多くのバリエーションがあるからと言って、全てのプログラムを実行すれば良いと言うわけでもありません。
いくつかを試して利用者さんの反応も見ながら、無理なく楽しんで行えるものを絞り込んでいくと良いでしょう。
体操は日々の積み重ねも大切ですので、いくつかの体操を定番として無理のない程度に、1日の流れの中に組み込むことができるのが理想と言えます。
ぜひ、これらの体操プログラムを参考にしてみてください。