人は加齢によって日々の運動量が減少していく傾向にあります。
「運動量が減少していく」ときいて皆さんは、その後の体の変化を度のようにイメージされますか?
上半身・体幹・下半身の筋肉が落ちてきて歩くことがおっくうになり、いずれは杖を…最悪は車いすでの生活…ということでしょうか?
確かに歩けなくなるなど、身の回りの生活が自分の力でできなくなることを想像すると、ぞっとしますね。
しかし、運動量が減少するとそのほかにも影響することは、みなさんはあまり考えたことがないかもしれません。
それは、「食べる」「話す」「呼吸する」といったことです。
高齢者にとっての口腔体操の目的・効果
「食べる」「話す」「呼吸をする」
これらの動作は顔・首・肺の周りの筋肉を使っておこなっています。
この筋肉が衰えてくるとどうなるでしょう?
まず「食べる」ことでむせ混みがひどくなり、そのままにすると誤嚥をおこし肺炎、最悪の場合は死に至ります。
「話す」ときにも声が出づらくなり、人との会話が困難になります。
「呼吸をする」というのは生命活動に直接関わってくるところですからいわずもがな、ですね。
そんな見逃しがちな顔や首回りの筋肉を口腔体操で鍛え、機能向上を計ることができます。
これらを行うことで口からしっかり食事がとれたり、人との会話を楽しんだり、しっかりと呼吸をすることができるようになります。
高齢者向け口腔体操【5つ】
ここでは、高齢者向けの代表的な口腔体操を5つご紹介します。
①早口言葉
早口言葉の効果は一言でいうと「滑舌をよくする」です。
しかしこれではあまりにも漠然としていますし、導入前の説明としては不十分です。
詳しく説明すると、滑舌とは「舌の動きのなめらかさ」という意味です。
滑舌が悪くなる原因は、表情筋と呼ばれる口の周りの筋肉が弱いこと、母音(あいうえお)がきちんと発音できていないことがあげられます。
早口言葉では表情筋を鍛えることができますし、しっかりとした早口言葉にするためには母音を意識して言葉を発声する必要があります。
また、息をしっかり吸ってからでないと発音がしにくいですので、呼吸筋もきたえることができますね。
職場のお年寄り向けに早口言葉をアレンジしたフリップネタを作成中。久々にこういうの楽しい pic.twitter.com/b9JaGIk64b
— 葉月2@ダンガンロンパ (@haduki02dgrp) January 26, 2017
そんな早口言葉を楽しくおこなえるようにレベル分けで紹介した以下の記事がありますので、参考にしてみてください。
記事のようにして早口言葉を導入すると、苦手な高齢者にも練習しやすいでしょう。
②歌
歌は、合唱などで多くの施設がレクリエーションとして導入されていると思います。
口腔体操として歌を導入するときの注意点は、たくさん息を吸って歌うときにしっかりはき出すこと、口を大きく開けることです。
これらの注意点を踏まえると、ゆっくりとした曲調のものがよいでしょう。
例えば・・・童謡などです。
童謡では歌詞が少ない上、テンポもゆっくりで高齢者もよくご存じの歌が多いと思います。
世代ごとの歌謡曲等ですと難しい曲もあり、歌えない方や歌いたくない方もいらっしゃいますからね。
口腔体操としての歌は、皆さんが歌うことができるものを用意しましょう。
この水曜日、安達さんが来られ、大正琴とアコーディオンで歌謡曲を披露してくださいました♪
手拍子をしながら楽しく歌を歌ったひと時でした。#名古屋市 #デイサービス #名東パラダイス #アコーディオン #大正琴 pic.twitter.com/E6R84SWISV— 社会福祉法人フジ福祉会 (@fuji_fukushikai) July 27, 2019
③パタカラ体操
デイサービスや使節では食事前にこの体操をおこなうところが多いと思います。
今日も皆さん元気に公民館で音楽サロン!
歌を歌ったりする前に、お口の体操です。
パタカラ体操。
皆さんおうちでもパタカラ体操していただいてるみたいで嬉しいです。
♯音楽 ♯公民館 ♯高齢者 pic.twitter.com/TiEfDhujZ9— ミュージックフープ~ ONKEN (@music_hoop) October 9, 2015
それでは体操発声する1文字にどのような効果があるかご存じでしょうか?
これが理解できて意識するだけでも、ただ体操をおこなうだけよりもグッと効果は上がりますよ。
「パ」は口をしっかり閉じて空気をためた後、一気にはき出すように発音しますね。
この空気をためることで口周りの筋肉を鍛えることができます。
この筋肉が強くなると口をしっかり閉じることができますので、食べ物が口からこぼれにくくなります。
「タ」は上あごと舌の前の方をぴったりとくっつけて発音しますね。
これは食べ物を飲み込む(嚥下)機能の維持に効果があります。
よく自分の口腔の動きを観察すると、飲み込むときにこのような動きをしているのがわかります。
「カ」は食べ物を飲み込んだ後、食道に送り込む練習になります。
この力が衰えると食べ物が気管に入ってしまいやすくなり、誤嚥性肺炎や窒息の原因になります。
これら4文字だけを発音することでも効果はありますが、さらに表情筋や呼吸筋を鍛えるために、応用として「パタカラ」を含めた文章を読むこともよいでしょう。
例えば「パパパンダ タタタタと太鼓をたたいた パカパカなった ラララララーメン」(文章の意味はありませんが…)というように例文を読んでいただきましょう。
歌もあるのでこちらもおすすめです。
④あいうえお体操
「あいうえお」とは母音です。
これらがしっかりと発音できないとそのほかの言葉も不明瞭になってしまいます。
「あいうえお」体操は発声練習としても効果がありますが、さらに大きな口を開けることで口周りの筋肉を鍛える、大きな声を出していただくことで呼吸筋を鍛えることができます。
あ:大きく開く
い:横に大きく開く
う:前に突き出す
え:舌に引っ張る
お:前に突き出す
ことを意識していただきながら体操をおこなってください。
⑤あいうべ体操
あいうえお体操と少し似ていますが、この体操は舌の動きも加わってよい体操となりますので紹介します。
基本的には「あいう」の口の動きは上記の体操と変わりません。
最後に「べー」と舌をだして、前に突き出すことで舌の筋肉を鍛えます。
1日10回くらいからはじめてみてください。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
ただ体操をおこなっていただくだけではその効果を最大限に発揮できません。
「今おこなう体操は度のような効果があるのか?」をしっかり説明してください。
特に口腔体操は筋肉が小さいので、意識しておこなわないといけません。
そしてなにより、楽しくおこなっていきましょう!
▼筆者がおすすめする口腔に関する一冊
(amazonレビューより引用)